ビルの受水槽には、面積ではなく容量で線が引かれる
建築物衛生法は延べ面積3,000平方メートルで線を引きますが、水道法はそこを見ません。水道法施行令第2条は「水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が十立方メートルであること」を基準とし、これを超えるものが簡易専用水道になります。小さいビルでも、水槽が大きければ対象です。
本サイトは e-Gov法令検索で確認した条文を整理したものです。届出の要否・様式・検査機関の選び方・自治体の上乗せ基準は、水道事業者(水道局)と保健所によって運用が異なります。実際の手続きは、お住まいの地域の水道局または保健所にご確認ください。
簡易専用水道の定義
水道法第3条第7項です。
「この法律において「簡易専用水道」とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く。」
定義を分解する(水道法第3条第7項・2026年9月13日確認)
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 水道事業の水道でない | 水道局そのものではない |
| ② 専用水道でない | 専用水道の基準(後述)に当たらない |
| ③ 水源が水道の水【のみ】 | 井戸水を混ぜていれば、この定義から外れる |
| ④ 政令の基準を超える | 水槽の有効容量の合計が10立方メートル超 |
出典:水道法第3条第7項、水道法施行令第2条。4つとも満たしたものが簡易専用水道です。
③の「のみ」に注意してください。井戸水を併用していると、簡易専用水道ではなくなります。その場合は別の扱い(専用水道、または建築物衛生法の地下水を水源とする給水)になります。→ 事務所ビルの水は7日ごとに検査する
10立方メートルという線
水道法施行令第2条は1文です。
「法第三条第七項ただし書に規定する政令で定める基準は、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が十立方メートルであることとする。」
数え方で間違えやすいところ
- 「有効容量」:水槽の外寸ではなく、実際に水を貯められる容量
- 「合計」:受水槽と高置水槽が別にあれば足し算する
- 「十立方メートルであること」が基準:基準【以下】は除外なので、超えたら対象
10立方メートルは10トンです。小さめの事務所ビルでも、受水槽と高置水槽を合わせれば届くことがあります。
「合計」という言葉があるため、水槽を分けても逃れられません。設計図か管理会社の資料で、有効容量を確認してください。
10立方メートル以下はどうなるか
法第3条第7項ただし書により、10立方メートル以下は簡易専用水道から除かれます。つまり水道法の第34条の2はかかりません。
ただし「何もしなくてよい」ではありません。多くの自治体が、条例や要綱で「小規模貯水槽水道」として管理を求めています。名称も基準も自治体ごとに違います。
容量による扱いの分かれ方
水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える
10立方メートル以下
井戸水を混ぜている
水槽を通さない(直結給水)
自治体の基準は本サイトでは断定しません。「うちは10立方メートル以下だから関係ない」と決める前に、水道局に確認してください。
専用水道との違い
混同されやすいのが専用水道です。法第3条第6項と施行令第1条が定めています。
簡易専用水道と専用水道(水道法第3条第6項・第7項、施行令第1条・第2条)
| 簡易専用水道 | 専用水道 | |
|---|---|---|
| 水源 | 水道事業の水【のみ】 | 自家用の水道(井戸水など)を含む |
| 規模の基準 | 水槽の有効容量の合計が10立方メートル超 | 100人を超える者に居住の水を供給/1日最大給水量が政令の基準超 |
| 他の水道から受ける水のみの場合の除外 | — | 口径25mm以上の導管の全長1,500m/水槽の有効容量の合計100立方メートル 以下は除く |
| 根拠条文 | 法第34条の2 | 法第32条〜第34条 |
出典:水道法第3条第6項・第7項、水道法施行令第1条・第2条。
専用水道のほうが規模が大きく、義務も重くなります。導管1,500メートル、水槽100立方メートルという数字が境目です。
設置者にかかる2つの義務
水道法第34条の2は、2つの項で2つの義務を定めています。
簡易専用水道の設置者の義務(水道法第34条の2)
| 項 | 条文 | 中身 |
|---|---|---|
| 第1項 | 国土交通省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない | 施行規則第55条の管理基準(4つ) |
| 第2項 | 定期に、地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない | 施行規則第56条で毎年1回以上 |
出典:水道法第34条の2。「管理する義務」と「検査を受ける義務」は別々です。
自分で管理していても、外部の検査は別に受けなければなりません。→ 簡易専用水道の管理基準は4つ/簡易専用水道の検査は毎年1回以上
延べ面積3,000平方メートルを超えるビルは、建築物衛生法も同時にかかります。頻度が違うので、そろえ方に注意が要ります。→ 貯水槽の清掃は年1回か6か月か
よくある取りこぼし
延べ面積で判定していた
水道法は水槽の有効容量で線を引きます。面積は見ません(施行令第2条)。
受水槽だけの容量で数えていた
条文は「水槽の有効容量の合計」です。高置水槽があれば足します。
ちょうど10立方メートルなので対象だと思った
基準【以下】は除外されます。対象になるのは10立方メートルを【超える】ものです。
井戸水を併用しているのに簡易専用水道だと思った
定義は「水道事業の用に供する水道から供給を受ける水【のみ】を水源とするもの」です。
10立方メートル以下だから何もしなくてよいと思った
水道法からは外れますが、多くの自治体が条例・要綱で管理を求めています。
管理していれば検査は不要だと思った
第1項(管理)と第2項(検査を受ける)は別の義務です。
確認に使った一次情報
- 水道法 第3条第7項(簡易専用水道の定義)/第34条の2(管理と検査)/第34条の3(検査の義務)e-Gov法令検索
- 水道法施行令 第1条(専用水道の基準)/第2条(簡易専用水道の適用除外の基準)e-Gov法令検索
- 水道法施行規則 第55条(管理基準)/第56条(検査)e-Gov法令検索
2026年9月13日に e-Gov法令検索で確認した条文です。自治体が条例で上乗せの基準を定めていることがあります。お住まいの地域の水道局または保健所にご確認ください。
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