兼任は禁じられていない。ただし「確認」が義務になる
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)は、延べ面積3,000平方メートル以上の特定建築物に置きます。「1人が複数のビルを兼ねてはいけない」という条文はありません。そのかわり、施行規則第5条第2項が「業務の遂行に支障がないことを確認しなければならない」という手続を課しています。
本サイトは一般的な整理です。実際に必要な届出・設備・寸法は、建物の用途・規模・構造によって変わります。着工前に必ず所轄の消防署と、建物の設計を担当した建築士(または内装業者)にご確認ください。
選任の義務
建築物衛生法第6条第1項です。
「特定建築物所有者等は、当該特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行なわれるように監督をさせるため、厚生労働省令の定めるところにより、建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。」
この一文に入っている3つのこと
| 区分 | 条文が定めていること |
|---|---|
| 選任するのは誰か | 特定建築物所有者等 |
| 何のためか | 維持管理が環境衛生上適正に行なわれるように監督をさせるため |
| 誰から選ぶか | 建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから |
出典:建築物衛生法第6条第1項。
役割は「監督」です。自分で掃除や測定をする人ではありません。維持管理が基準どおり行われているかを見る立場です。
対象になるかどうかは延べ面積3,000平方メートルが分かれ目です。→ 事務所が3,000㎡を超えたら保健所に届出
「特定建築物ごとに」
施行規則第5条第1項は1文です。
「特定建築物所有者等は、特定建築物ごとに建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。」
「ごとに」なので、建物が2つあれば2つとも選任が必要です。会社に1人いればよい、という制度ではありません。
ただし「同じ人が2つの建物の管理技術者になってはいけない」とは書かれていません。そこを定めているのが次の第2項です。
兼任するときの確認
施行規則第5条第2項です。
「特定建築物所有者等は、前項の規定による選任を行う場合において、選任しようとする者が同時に二以上の特定建築物の建築物環境衛生管理技術者を兼ねることとなるときには、当該二以上の特定建築物の建築物環境衛生管理技術者となつてもその業務の遂行に支障がないことを確認しなければならない。」
兼任するときの手順
- ① 兼任になるかどうかを見る「同時に二以上の特定建築物の建築物環境衛生管理技術者を兼ねることとなるとき」が条件です。
- ② 維持管理権原者が別にいるか確かめる第4項。所有者等以外に特定建築物維持管理権原者があるときは、あらかじめ意見を聴かなければなりません。
- ③ 業務の遂行に支障がないことを確認する第2項。確認そのものが義務です。
- ④ 選任する確認を経てから選任します。
第4項の「あらかじめ」に注意してください。確認を済ませてから意見を聴くのではなく、意見を聴いてから確認します。条文は「第二項……の規定による確認を行う場合において、当該特定建築物について当該特定建築物所有者等以外に特定建築物維持管理権原者があるときは、あらかじめ、当該特定建築物維持管理権原者の意見を聴かなければらない。」としています。
第3項は、すでに選任している人が新たに他のビルを兼ねる場合にも第2項を準用するとしています。あとから増えるときも、そのつど確認が要ります。
意見を述べることができる
建築物衛生法第6条第2項は、管理技術者の側の権限を定めています。
「建築物環境衛生管理技術者は、当該特定建築物の維持管理が建築物環境衛生管理基準に従つて行なわれるようにするため必要があると認めるときは、当該特定建築物の所有者、占有者その他の者で当該特定建築物の維持管理について権原を有するものに対し、意見を述べることができる。この場合においては、当該権原を有する者は、その意見を尊重しなければならない。」
意見の扱い(法第6条第2項)
| 立場 | 条文 |
|---|---|
| 建築物環境衛生管理技術者 | 意見を述べることができる |
| 維持管理について権原を有する者 | その意見を尊重しなければならない |
出典:建築物衛生法第6条第2項。「尊重しなければならない」は法律上の義務の書き方です。
管理技術者は雇われている立場でも、意見を述べる権限が法律に書かれています。そして受け取る側には尊重義務があります。
測定や清掃の結果が基準を外れているとき、この条文が根拠になります。→ 事務所の空気環境測定は2か月に1回/大掃除は6か月以内ごとに1回
免状を持っている人とは
法第7条第1項は、免状の交付を受けられる人を2通りで定めています。
建築物環境衛生管理技術者免状(法第7条第1項)
| 号 | 条文 |
|---|---|
| 第一号 | 厚生労働省令で定める学歴及び実務の経験を有する者……で、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習会……の課程を修了したもの |
| 第二号 | 建築物環境衛生管理技術者試験に合格した者 |
出典:建築物衛生法第7条第1項。講習会の課程を修了する道と、試験に合格する道の2つがあります。
講習会の受講資格は施行規則第6条が定めています。たとえば第一号は「大学……において理学、医学、歯学、薬学、保健学、衛生学、工学、農学又は獣医学の正規の課程を修めて卒業した後、一年以上建築物の維持管理に関する実務に従事した経験」を有する者です。
学歴によって必要な実務年数が変わります。短期大学・高等専門学校の場合は別の号が定めています。詳しくは施行規則第6条をご確認ください。
よくある取りこぼし
会社に1人いればよいと思った
施行規則第5条第1項は「特定建築物ごとに」選任することを求めています。
兼任は禁止されていると思った
禁止する条文はありません。ただし第2項の「支障がないことの確認」が義務です。
確認をしないまま兼任させた
「確認しなければならない」。確認そのものが義務です。
あとから兼任が増えたときに確認しなかった
第3項が第2項を準用しています。新たに兼ねるときも確認が要ります。
維持管理権原者の意見を聴かなかった
第4項。所有者等以外に維持管理権原者がいるときは、あらかじめ意見を聴きます。
管理技術者が意見を言えないと思っていた
法第6条第2項「意見を述べることができる」。権原者には尊重義務があります。
管理技術者が自分で清掃や測定をすると思っていた
法第6条第1項の目的は「監督をさせるため」です。
確認に使った一次情報
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則 第4条の3(排水に関する設備の掃除等)/第4条の4(防除を行う動物)/第4条の5(清掃等及びねずみ等の防除)/第5条(建築物環境衛生管理技術者の選任)e-Gov法令検索
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律 第6条(建築物環境衛生管理技術者)e-Gov法令検索
- 同 施行令 第1条(特定建築物)/第2条第3号(清掃及びねずみ等の防除)e-Gov法令検索
2026年9月13日に e-Gov法令検索で確認した条文です。実施の体制・記録の残し方・保健所の運用は自治体ごとに異なります。所在地を管轄する保健所にご確認ください。
体制を決めるタイミングで、什器と配置もまとめて見直す
維持管理の体制を組み直すときは、避難経路と空気の通り道もあわせて確認してください。
- 価格・在庫・納期は各社公式サイトでご確認ください
- 設置できる什器は建物の条件により異なります
- 工事を伴う場合は所轄消防署への届出が必要になることがあります
事務所のレイアウトと法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
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