家具を買う前に
届出が要るかを確かめる
オフィスのレイアウト変更でいちばん多い手戻りは、工事を頼んでから「消防署への届出が要る」と分かることです。
オフィスのレイアウトには、性格の違う4つの法律が同時にかかっています。どれか1つだけ見ても判断できません。まず全体の地図を持ってください。
4つの法律の地図
オフィスのレイアウトにかかる4つの法律
| 法律 | 何を決めているか | つまずきやすいところ |
|---|---|---|
| 消防法(+火災予防条例) | 届出、消防用設備、防火管理者 | 工事の着手前に届出が要ることを知らずに着工する |
| 建築基準法 | 内装制限、排煙、用途変更の確認申請 | 間仕切りを立てると区画が変わり、既存の設備の前提が崩れる |
| 法人税法(減価償却) | 什器を経費にできるか、何年で落とすか | まとめ買いの金額の切り方で、その年の損金が変わる |
| 労働安全衛生法(事務所衛生基準規則) | 照度、温度、便所の数など働く環境 | 改正されていることに気づかない |
この4つは所管がバラバラです。内装業者は消防と建築を、税理士は減価償却を見ますが、全部を横断して見る人は普通いません。
確認する順番
レイアウトを変えるときの順番
- ① 何を作るのかを決める会議室を仕切るのか、席を並べ替えるだけか。天井まで壁を立てるかどうかで、以降が全部変わります。
- ② 消防署への届出が要るかを確かめる工事を伴うなら、着手の7日前までの届出が必要になることがあります。
- ③ 建物側の条件を確認する排煙・スプリンクラー・自動火災報知設備は、建物の図面を前提に設計されています。区画を変えると前提が崩れます。
- ④ 収容人員が変わるかを見る人が増えると、防火管理者や便所の数の要件に触れることがあります。
- ⑤ 買うものの金額を決める1点あたりの取得価額で、経費にできるか資産にするかが変わります。
- ⑥ 着工前に、所轄消防署に相談するここを飛ばさないでください。建物ごとに判断が違います。
①で「天井まで立てない」と決められるなら、②〜③がまるごと軽くなります。最初の判断がいちばん効きます。
間仕切りの高さが分かれ目
東京消防庁は、防火対象物工事等計画届出書について次のように案内しています。
天井に達しない間仕切り壁(ローパーテーション等)の設置する場合は届出の必要はない
東京消防庁「防火対象物の工事等計画の届け出をしよう」
つまり天井に届くかどうかが、届出の要否を分けます。逆に言えば、天井まで立てる間仕切りは「模様替え」にあたり、着手の7日前までに届け出ることになります。
→ 図は横にスクロールできます
- 置くだけ床に置くローパーテーション。建物に固定しない
- 天井に届かない固定床に固定するが天井には達しない
- 天井まで立てる模様替えにあたる。着手の7日前までに届出
- 設備に触る排煙・スプリンクラー・自火報の配置に影響する
どこに当たるかは建物と工事の内容で決まります。判断は所轄消防署と施工者に確認してください。
会議室を1つ増やしたいだけなら、天井に達しないパーテーションで足りることが多いです。詳しくは間仕切りのページで扱います。
天井に達しないパーテーションと什器を見る
設置できる高さ・仕様は製品により異なります。建物の条件は所轄消防署と施工者にご確認ください。
- 価格・在庫・納期は各社公式サイトでご確認ください
- 設置できる什器は建物の条件により異なります
- 工事を伴う場合は所轄消防署への届出が必要になることがあります
人数で変わること
オフィスは、人数が増えると別の要件に触れます。レイアウト変更が増員とセットのときは、ここを見ておいてください。
収容人員・従業員数で変わるもの
| 基準 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 収容人員 50人以上 | 非特定用途(事務所を含む)は防火管理者の選任が必要 | 東京消防庁 |
| 収容人員 30人以上 | 特定用途(飲食店・物販など)はこちら。事務所は非特定用途 | 東京消防庁 |
| 女性労働者 20人以内ごと | 女性用便所を1個以上 | 厚生労働省(令和3年12月改正) |
| 男性労働者 60人以内ごと | 男性用大便所を1個以上 | 同上 |
| 男性労働者 30人以内ごと | 男性用小便所を1個以上 | 同上 |
独立個室型の便所を設ける場合、算定において男女それぞれ10人ずつ減らすことができます(厚生労働省)。
お金の側の線引き
什器は「買った年に全部経費」とは限りません。1点あたりの取得価額で扱いが変わります。
国税庁の耐用年数では、事務机・事務いす・キャビネットは主として金属製のもの15年、その他のもの8年です。ただし中小企業者等には、取得価額30万円未満の資産を年間300万円まで一度に損金算入できる特例があります(適用要件・期限あり)。
この線引きを知らずにまとめ買いすると、その年の損金にできる額が変わります。経費のページで整理しました。
誰に聞けばよいか
相談先の使い分け
| 聞く相手 | 答えてもらえること | 答えてもらえないこと |
|---|---|---|
| 所轄の消防署(予防課) | 届出の要否、必要な様式、検査の有無 | 税務・労働の話 |
| 建物の管理会社・オーナー | 館内の規則、共用部の扱い、工事の可否 | 法令上の可否の最終判断 |
| 内装業者・施工者 | 工法、図面、実際の施工 | 税務の判断 |
| 建築士 | 建築基準法上の扱い、確認申請の要否 | 消防署の判断そのもの |
| 税理士 | 取得価額の判定、損金算入 | 消防・建築の話 |
「全部わかる人」はいません。分けて聞くのが早道です。
本サイトは一般的な整理です。実際に必要な届出・設備・寸法は、建物の用途・規模・構造によって変わります。着工前に必ず所轄の消防署と、建物の設計を担当した建築士(または内装業者)にご確認ください。
よくある疑問
パーテーションを置くだけでも届出が要りますか。
届出はいつまでに出すのですか。
届出は誰が出すのですか。
東京以外でも同じですか。
事務所は消防法の何項ですか。
事務所のレイアウトと法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。