条文が求めているのは駆除ではなく、6か月ごとの調査
延べ面積3,000平方メートル以上の事務所ビルは、建築物衛生法の特定建築物です。ねずみ等の防除は「出たら駆除する」ではありません。施行規則第4条の5第2項第1号は「六月以内ごとに一回、定期に、統一的に調査を実施し、当該調査の結果に基づき、ねずみ等の発生を防止するため必要な措置を講ずること。」としています。調査が先で、措置はその結果にもとづきます。
本サイトは一般的な整理です。実際に必要な届出・設備・寸法は、建物の用途・規模・構造によって変わります。着工前に必ず所轄の消防署と、建物の設計を担当した建築士(または内装業者)にご確認ください。
「ねずみ等」に何が入るか
施行規則第4条の4が定義しています。
「令第二条第三号の厚生労働省令で定める動物は、ねずみ、昆虫その他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物(以下「ねずみ等」という。)とする。」
条文が挙げているもの(施行規則第4条の4)
| 区分 | 条文の文言 |
|---|---|
| ① ねずみ | ねずみ |
| ② 昆虫 | 昆虫 |
| ③ その他 | 人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物 |
出典:建築物衛生法施行規則第4条の4。③があるので、ねずみと昆虫だけに限られません。
「人の健康を損なう事態を生じさせるおそれ」が基準です。不快なだけの生き物は、条文の文言からは外れます。逆に、衛生害虫であれば昆虫以外も入ります。
この建物が特定建築物に当たるかは延べ面積3,000平方メートルが分かれ目です。→ 事務所が3,000㎡を超えたら保健所に届出
6か月以内ごとに1回、統一的に
第4条の5第2項第1号の要点は3つです。
条文が求めていること
- 六月以内ごとに一回(前回から6か月を超えてはいけない)
- 定期に(不定期の対応では足りない)
- 統一的に(建物の一部だけ、階ごとにバラバラではない)
「統一的に」という言葉が、この条文の性格を表しています。ねずみは建物の中を移動します。1フロアだけ調べても、どこから来ているかは分かりません。
大掃除にも同じ「統一的に」が使われています。第4条の5第1項は「日常行うもののほか、大掃除を、六月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うものとする。」としています。→ 大掃除は6か月以内ごとに1回
調査で見る4つのこと
条文は調査の対象を列挙しています。
「ねずみ等の発生場所、生息場所及び侵入経路並びにねずみ等による被害の状況について」
調査の対象(施行規則第4条の5第2項第1号)
| 対象 | 見るもの |
|---|---|
| 発生場所 | どこで増えているか |
| 生息場所 | どこに棲みついているか |
| 侵入経路 | どこから入ってきているか |
| 被害の状況 | 何にどんな被害が出ているか |
出典:施行規則第4条の5第2項第1号。4つとも「調査の結果に基づき……必要な措置を講ずる」ための材料です。
4つのうち「侵入経路」がいちばん見落とされます。駆除だけを繰り返しても、入口が開いていれば戻ってきます。条文が侵入経路を調査対象に挙げているのは、そのためです。
措置は「調査の結果に基づき」行うと書かれています。調査をしていない状態で薬剤をまくのは、条文の順番と逆です。
使える薬剤は限られている
第4条の5第2項第2号は、薬剤を限定しています。
「ねずみ等の防除のため殺そ剤又は殺虫剤を使用する場合は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律……第十四条又は第十九条の二の規定による承認を受けた医薬品又は医薬部外品を用いること。」
薬機法の承認を受けた医薬品または医薬部外品に限られます。「雑貨」として売られている忌避剤や、承認を受けていない薬剤は、この条文の求めるものではありません。
薬剤を使うときに確かめること
- 薬機法第14条または第19条の2の承認を受けているか
- 医薬品または医薬部外品として表示されているか
- 調査の結果にもとづいて使うことになっているか
業者に委託している場合も、使っている薬剤の区分は確認できます。見積書や作業報告書に薬剤名が書かれているはずです。
やるのは誰か
施行令第2条第3号ロは、建築物環境衛生管理基準の一部として「厚生労働省令で定めるところにより、ねずみ等の発生及び侵入の防止並びに駆除を行うこと。」としています。
そして第4条の5第3項は、技術上の基準に従った維持管理の努力義務を定めています。
「令第二条第三号イ及びロの規定により掃除、廃棄物の処理、ねずみ等の発生及び侵入の防止並びに駆除を行う場合は、厚生労働大臣が別に定める技術上の基準に従い、掃除及びねずみ等の防除並びに掃除用機器等及び廃棄物処理設備の維持管理に努めなければならない。」
この維持管理を監督する立場の人が、建築物環境衛生管理技術者です。→ ビル管理技術者の兼任は禁止されていない
よくある取りこぼし
出たときだけ駆除を頼んでいた
条文は「六月以内ごとに一回、定期に、統一的に調査を実施し」です。調査が先です。
調査をせずに薬剤をまいていた
措置は「当該調査の結果に基づき」行うと書かれています。順番が逆です。
侵入経路を調べていなかった
調査の対象は発生場所・生息場所・侵入経路・被害の状況の4つです。
1フロアだけ調べていた
条文は「統一的に」です。建物の一部だけでは足りません。
市販の忌避剤で足りると思った
殺そ剤・殺虫剤は薬機法第14条または第19条の2の承認を受けた医薬品・医薬部外品に限られます。
ねずみと昆虫だけだと思った
第4条の4は「その他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物」も含めています。
前回から7か月あいてしまった
「六月以内ごとに一回」。前回から6か月を超えてはいけません。
確認に使った一次情報
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則 第4条の3(排水に関する設備の掃除等)/第4条の4(防除を行う動物)/第4条の5(清掃等及びねずみ等の防除)/第5条(建築物環境衛生管理技術者の選任)e-Gov法令検索
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律 第6条(建築物環境衛生管理技術者)e-Gov法令検索
- 同 施行令 第1条(特定建築物)/第2条第3号(清掃及びねずみ等の防除)e-Gov法令検索
2026年9月13日に e-Gov法令検索で確認した条文です。実施の体制・記録の残し方・保健所の運用は自治体ごとに異なります。所在地を管轄する保健所にご確認ください。
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一次情報の確認先
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