防火管理者を選任していても、これは別に要る
自衛消防組織は、防火管理者・防災管理者・統括防火管理者とは別の制度です。消防法第8条の2の5は「多数の者が出入するものであり、かつ、大規模なものとして政令で定めるもの」に「自衛消防組織を置かなければならない」としています。線引きは「人数」ではなく「延べ面積」と「階数」です。
本サイトは一般的な整理です。実際に必要な届出・設備・寸法は、建物の用途・規模・構造によって変わります。着工前に必ず所轄の消防署と、建物の設計を担当した建築士(または内装業者)にご確認ください。
対象になる大きさ
消防法施行令第4条の2の4は、対象を階数と延べ面積の組み合わせで定めています。
自衛消防組織を置く防火対象物(消防法施行令第4条の2の4・2026年9月12日確認)
| 地階を除く階数 | 延べ面積 |
|---|---|
| 11以上 | 一万平方メートル以上 |
| 5以上10以下 | 二万平方メートル以上 |
| 4以下 | 五万平方メートル以上 |
| 地下街(別表第一(十六の二)項) | 千平方メートル以上 |
出典:消防法施行令第4条の2の4。地階は階数に数えませんが、延べ面積には入ります。
高い建物ほど、小さい面積で対象になります。11階建て以上なら1万㎡、4階以下なら5万㎡。5倍の開きがあります。
防火管理者の基準が収容人員で決まるのに対し、自衛消防組織は面積と階数で決まります。人が少なくても、建物が大きければ対象です。→ 事務所に防火管理者は必要か
複合用途のビル(別表第一(十六)項)は、建物全体ではなく「対象用途に供される部分の床面積の合計」で判断します。条文は、11階以上の建物について「自衛消防組織設置防火対象物の用途に供される部分の全部又は一部が十一階以上の階に存する防火対象物で、当該部分の床面積の合計が一万平方メートル以上のもの」としています。
つまり、1階に店舗が入っている貸しビルでも、事務所部分の合計面積で見ます。
事務所は対象用途に入る
条文は対象用途を「別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項から(十二)項まで、(十三)項イ、(十五)項及び(十七)項」と列挙しています。
このうち(十五)項は「前各項に該当しない事業場」です。一般的な事務所はここに入ります。
防炎物品のときと違い、事務所が用途の一覧から外れてはいません。防炎物品の対象用途(別表第一(一)項〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ、(十六の三)項)には事務所が入っていませんでした。制度ごとに用途の範囲が違うので、ひとつの表で覚えないでください。→ 防炎物品が要るのは高さ31m超のビル
除かれているのは(十三)項ロ(航空機の格納庫等)/(十四)項(倉庫)/(十六)項ロ/(十六の三)項/(十八)項〜(二十)項などです。倉庫が外れている点は、面積の大きい建物を扱う人ほど間違えやすいところです。
置くのは誰か
消防法施行令第4条の2の5は、自衛消防組織を置くのは「その管理についての権原を有する者」だとしています。建物の所有者とはかぎりません。
そして第2項は「前項の場合において、当該権原を有する者が複数あるときは、共同して自衛消防組織を置くものとする。」としています。
ここが統括防火管理者と違うところです。統括防火管理者は「協議して1人を選ぶ」仕組みですが、自衛消防組織は「共同して1つの組織を置く」仕組みです。→ 統括防火管理者が要るのは高さ31m超から
業務の中身は消防計画に書きます。第4条の2の6は、権原者が「その者が定めた防火管理者に」、消防計画において「自衛消防組織の業務に関する事項を定めさせなければならない」としています。
防火管理者を選任していない建物では、この手順がそもそも回りません。先に防火管理者、次に自衛消防組織という順番になります。
やることは第4条の2の7が「火災の初期の段階における消火活動、消防機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災の被害の軽減のために必要な業務」と定めています。
統括管理者になれる人
第4条の2の8は「自衛消防組織には、統括管理者及び総務省令で定める自衛消防組織の業務ごとに総務省令で定める員数以上の自衛消防要員を置かなければならない。」としています。
統括管理者の資格は2通りです。
統括管理者になれる者(消防法施行令第4条の2の8第3項)
| 号 | 条文 |
|---|---|
| 第一号 | 都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長又は法人であつて総務省令で定めるところにより総務大臣の登録を受けたものが行う自衛消防組織の業務に関する講習の課程を修了した者 |
| 第二号 | 前号に掲げる者に準ずる者で、総務省令で定めるところにより、統括管理者として必要な学識経験を有すると認められるもの |
出典:消防法施行令第4条の2の8第3項。講習の実施に関する事項は総務省令で定められます。
防火管理者の資格(甲種・乙種)とは別の講習です。防火管理者の講習を受けていても、それだけで統括管理者にはなれません。
自衛消防要員の員数は総務省令で定めるとされており、条文には数字が書かれていません。ここは所轄の消防署に確認する箇所です。
置いたあとに出す届出
消防法第8条の2の5第2項は「前項の権原を有する者は、同項の規定により自衛消防組織を置いたときは、遅滞なく自衛消防組織の要員の現況その他総務省令で定める事項を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。当該事項を変更したときも、同様とする。」としています。
順番
- ① 建物の階数と延べ面積を確かめる地階を除く階数11以上なら1万㎡、5〜10階なら2万㎡、4階以下なら5万㎡。
- ② 用途が別表第一の対象に入るか確かめる事務所は(十五)項なので入ります。倉庫(十四)項は入りません。
- ③ 管理権原者を確かめる複数いれば「共同して」置きます。単独で置いて済む話ではありません。
- ④ 防火管理者に消防計画へ書かせる第4条の2の6。自衛消防組織の業務に関する事項を消防計画に定めます。
- ⑤ 統括管理者と自衛消防要員を決める統括管理者は講習修了者か、学識経験を認められた者。
- ⑥ 遅滞なく届け出る所轄消防長または消防署長へ。要員を変更したときも同じです。
「遅滞なく」なので、期限が日数で書かれているわけではありません。置いたらすぐ、が条文の書き方です。
置いていないと命令が出ます。第3項は「消防長又は消防署長は、第一項の自衛消防組織が置かれていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により自衛消防組織を置くべきことを命ずることができる。」としています。
似ている4つの制度の違い
何で線が引かれるか(2026年9月12日確認)
| 制度 | 線の引き方 |
|---|---|
| 防火管理者 | 収容人員(事務所なら50人) |
| 防災管理者 | 階数と延べ面積(11階建て1万㎡など) |
| 統括防火管理者 | 管理権原が分かれていること+高さ31m超など |
| 自衛消防組織 | 階数と延べ面積(11階建て1万㎡など) |
出典:消防法・消防法施行令および東京消防庁の公表内容。複数が同時にかかることがあります。
自衛消防組織と防災管理者は、線の引き方がよく似ています。同じ建物で両方が同時に必要になることがあります。→ 防災管理者は防火管理者とどう違うか
よくある取りこぼし
防火管理者を選任したから済んだと思った
別の制度です。消防法第8条の2の5は自衛消防組織を置くことを別に義務づけています。
収容人員で判断した
自衛消防組織は階数と延べ面積で決まります。人数の基準はありません。
倉庫も対象だと思った
別表第一(十四)項(倉庫)は対象用途の列挙に入っていません。
建物全体の面積だけ見た
複合用途(十六)項は「対象用途に供される部分の床面積の合計」で判断します。
管理権原者が複数いるので誰かが置くと思った
「当該権原を有する者が複数あるときは、共同して自衛消防組織を置くものとする。」
防火管理者の講習で統括管理者になれると思った
統括管理者は「自衛消防組織の業務に関する講習」の修了者です。別の講習です。
届出の期限を探した
条文は「遅滞なく」です。日数の定めではありません。変更したときも同じです。
確認に使った一次情報
2026年9月12日に e-Gov法令検索で確認した条文です。実際に該当するかどうかは、建物の用途・規模・管理権原の分かれ方によって変わります。所轄の消防署にご確認ください。
建物の規模が大きい現場ほど、什器と配置を先に見直す
避難経路と収容人員に影響する配置は、所轄消防署と管理会社にご確認ください。
- 価格・在庫・納期は各社公式サイトでご確認ください
- 設置できる什器は建物の条件により異なります
- 工事を伴う場合は所轄消防署への届出が必要になることがあります
事務所のレイアウトと法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。