1人あたりを決めて、人数を掛ける。それだけ
備蓄品のリストを眺めても決まりません。1人あたりの数量は公表されています。あとは人数を掛けるだけです。難しいのは、掛ける人数のほうです。
1人あたりの目安
東京都の帰宅困難者対策ハンドブックが示している目安です。
1人あたりの備蓄(東京都帰宅困難者対策ハンドブック)
| 品目 | 目安 | 内訳 |
|---|---|---|
| 水 | 計9リットル | 1人当たり1日3リットル × 3日 |
| 主食 | 計9食 | 1人当たり1日3食 × 3日 |
| 毛布 | 1枚 | — |
| 簡易トイレ・衛生用品・ビニール袋等 | 従業員数に応じて | 数量の記載なし |
「3日分」は東京都帰宅困難者対策条例 第7条第2項の「三日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資」に対応します。
簡易トイレの回数について、本サイトでは目安を示しません。ハンドブックに数量の記載がないためです。事業所の所在地の自治体が独自の目安を示していることがあるので、そちらを確認してください。
本サイトは東京都および内閣府の公表内容を整理したものです。備蓄の要否・数量の考え方は自治体の条例やガイドラインによって異なります。事業所の所在地の自治体(防災担当課)でご確認ください。
人数の数え方
ここが実務の難所です。「従業員数」ではなく「そのとき社内にいる人数」で考えます。
数に入れるかを判断する対象
- 正社員(常時いる人。ここが基準)
- 契約社員・パート・アルバイト(常時いるなら同じ扱い)
- 派遣・業務委託で常駐している人
- その日の来客・取引先・面接に来た人
- テナントビルなら、共用部にいる人をどう考えるか(ビル全体の方針を確認)
そして東京都のハンドブックは、外部の帰宅困難者のために10%程度の量を余分に備蓄することの検討を挙げています。
実務では、「いちばん人が多い日の人数 + 10%」で置くのが分かりやすい形です。ただし置き場所と費用の制約があるので、最後は自社で決めることになります。決めた根拠を記録に残してください。あとで説明を求められたときに効きます。
計算してみる
従業員30人の事業所の場合(目安を機械的に当てはめた例)
- 人数の想定30人 + 10% = 33人
- 水33人 × 9リットル = 297リットル
- 主食33人 × 9食 = 297食
- 毛布33枚
2リットルのボトルなら約149本。500ミリリットルなら594本。段ボールにすると相当な量になります。
この量を実際に置ける場所があるかを、買う前に確認してください。「注文してから置き場所を探す」と、避難通路に積むことになります。
置ける量に収まらないとき
量が入らないときの考え方
保管場所を分散する
収納什器を入れて縦に使う
かさばるものを見直す
段階的にそろえる
備蓄品を縦に収納できる棚・ロッカーを見る
転倒防止と、避難通路を塞がない配置が前提になります。設置条件は施工者と所轄消防署にご確認ください。
- 価格・在庫・納期は各社公式サイトでご確認ください
- 設置できる什器は建物の条件により異なります
- 保管場所が避難通路を塞がないようご注意ください
会社がまとめて持つか、個人に持たせるか
「各自でデスクに置いてもらえばよいのでは」という案が必ず出ます。どちらにも欠点があります。
まとめて持つ/個人に持たせる
| 観点 | 会社がまとめて持つ | 個人に持たせる |
|---|---|---|
| 取り出しやすさ | 保管場所まで行く必要がある | 手元にある |
| 期限の管理 | 一覧で管理できる | ほぼ管理できなくなる |
| 数の把握 | 正確に分かる | 誰が持っているか分からなくなる |
| 来客の分 | 余分に持てる | 対応できない |
| 異動・退職 | 影響しない | 持ち出されたか残っているか分からない |
| 置き場所 | まとまった面積が要る | 面積は要らない |
実務では「会社がまとめて持つ」を基本にし、個人に持たせるのは補助的にする形が管理しやすくなります。
個人に持たせる方式の最大の問題は、期限管理と異動です。3年後に誰が何を持っているか分からなくなります。配るなら、期限が来たら回収して入れ替えるところまでを決めてください。
一方で、まとめて持つ方式の弱点は「取りに行けない」ことです。停電でエレベーターが止まったときのために、保管場所を分散させる考え方があります。保管場所のページで扱います。
水と食料以外
条例は「飲料水、食糧その他災害時における必要な物資」としています。何が「必要な物資」かは、3日間そこで過ごすために要るものから考えます。
ハンドブックが明示しているのは毛布と、簡易トイレ・衛生用品・ビニール袋等です。それ以外について本サイトでは品目を列挙しません。事業所の状況(在館者に配慮が必要な人がいるか、医療機器を使う人がいるか)で変わるためです。
ただし、停電を前提に考えると必要なものが見えます。照明、情報を得る手段、機器の充電。電源については、家庭向けですが停電・防災の電源確保で容量の決め方を整理しています。考え方は事業所でも同じです。
よくある失敗
従業員数だけで数える
そのとき社内にいる人が対象です。ハンドブックは10%程度の上乗せの検討を挙げています。
置き場所を決める前に注文する
入りきらず、避難通路に積むことになります。
床に平置きする
面積を食い、地震で散乱します。棚に入れて転倒防止をしてください。
一度に全部そろえようとして止まる
水から段階的に始めれば進みます。
決めた根拠を残さない
人数の想定を後から説明できなくなります。
よくある疑問
簡易トイレは何回分必要ですか。
水は2リットルと500ミリリットルのどちらがよいですか。
女性用品も備蓄すべきですか。
アレルギーや食事制限のある人がいます。
備蓄品の費用はどう処理しますか。
事業所の防災備蓄ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。